港区・品川区の不動産・マンションはタマホーム不動産 > ブログ記事一覧 >「旧耐震」の資産価値~耐震基準は何を守るのか?

「旧耐震」の資産価値~耐震基準は何を守るのか?

テーマ:ライター記事

≪写真と本文は関係ありません。Photo/AC≫

 今年7月に発表された厚労省の「国民生活基礎調査の概況(平成29年版)」によれば、日本の世帯平均所得は約560万円で、物件購入の予算を決める際によく使われる「住宅ローンの返済比率」(※1)から逆算すると、平均的な一般世帯が購入可能なマンション・一戸建ての価格帯は、概ね3,500~4,000万円辺りといったところになります。

 しかしながら東京都心では、新築マンションの売出価格高騰に引っ張られる格好で、中古マンションの売買価格が久しく高値圏で推移しており、そこで、こうした需給ギャップを埋める形で、昭和56年(1981年)5月31日までに建築確認が出されたいわゆる「旧耐震マンション」に興味を示されるお客様も増えてきています。

 この「旧耐震」「新耐震」という基準ですが、平たく言えば、旧耐震基準震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないことを目的とした構造基準、新耐震基準震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないことを目的とした構造基準のことをいいます。

 不動産業界の常識としては、当然、より安全性の高い新耐震基準のものを中心にお客様にご案内さしあげるわけですが、なかには「実際に過去の地震で大きな被害は出ていない」という事実をもって、こうした新旧構造基準の違いによる地震リスクを承知で、旧耐震マンションを検討されるお客様も少なからずいらっしゃいます。

 旧耐震マンションについては、既に建築後40年以上経っている物件が多く、今後に控える大規模改修・建替え決議に伴う費用まで勘案すると、目の前の耐震改修工事の実施すらままならないマンションもあるため購入を検討される際には注意が必要です。

※1 一般的に、年収400万以上であれば年収額の35%、400万円以下であれば30%が、それぞれ年間返済額の限度額と言われており、実際に、生活水準の変化を許容できる現実的な借入額はおおよそ年収の6~7倍と言われている。


■ 耐震基準を「資産価値」の観点で捉えてはいけない

 耐震基準の究極の目的は、地震による建物の倒壊による居住者の死亡(圧迫死・窒息死)を防ぐことにあります。よって、マンション選びをされる際に、新耐震と旧耐震の違いを「資産価値」(金銭価値)に置いて判断されると、後々さまざまな「こんなはずじゃなかった」に遭遇することになります。

 まず、旧耐震マンションにおいてはそもそも現行基準に照らした耐震診断が行われていないところもかなりの数存在します。
 その理由の多くは費用の問題であり、いまの管理状況から推測して、耐震化工事を行うのに必要な1戸当たり数百万円の工事費用の負担について各居住者から納得を得られないのが自明ならば、初めから150万円とも300万円とも言われる耐震診断調査を行うのはよしましょう...といったお考えの管理組合もあるようです。(※2)

 勿論、費用の問題は、そこにお住まいになられる方にとっては負担の大きい現実的問題であり、「無い袖は振れない」という事情も十分理解できます。しかしながら、資産価値の面から不利な情報をあえて曖昧にしておくという選択をすることが本当に資産の実態価値によい影響を与えているかというと、とりわけ地震リスクに敏感な関東圏においては、地震リスクという重要情報が非開示のまま売りに出されているというマイナス面の方が大きいように思えます。

※2 (参考)2015年10月29日、マンションジャーナル【必見!】多くのマンションで耐震診断が行われない本当の理由」


■ 扉が開かない「半壊」マンション

 先ほど申し上げたように、建物の構造基準(耐震基準)というのは、建物の倒壊の危険性から居住者の方の生命の安全を守ることを目的とした基準です。ですから、日本建築学会の定める被災度判定基準では、被災後の建物の状態として「構造体に問題はなく、その他部分の補修を必要とする」というレベルであれば、「小破」や「軽微」といった判定が下されます。

 しかしながら、実際に被災された居住者の方が生活再建のために役所から交付してもらう、罹災証明書の発行基準によると、これら判定はどう異なってくるでしょうか? 罹災証明はあくまで「被災者をいち早く日常生活に復帰させる」ことが目的ですので、「住居がその居住に必要な基本機能を(一部)喪失している」と認められると「損壊(全壊・半壊)」の判定は出ます。
 話しを具体的にしてみましょう。例えば、マンションの玄関ドアがあります。マンションの玄関ドアはその構造上、ドア枠が3mm変形すると開かなくなるといいます。玄関ドアが開かなければ、当然ですが居室内に出入りできないため居住は不可となります。罹災証明上の判定では、恐らく「半壊」として認定されることになるでしょう。(※3) 程度の差こそあれ、「半壊」認定されたマンションの資産価値が低下することはすぐお分かりになると思います。

 このお話しを差し上げると「それでは新耐震マンションでも『半壊』することがあり得るのか?」との質問をお受けすることがあります。結論からすればYesですし、しかしながら、だからこそお客様には、購入マンションの耐震基準に捉われず、必要な防災投資を賢く行なっていただければと思います。(※4)
 資産価値の観点に捉われ、耐震改修の是非といった狭いオプションのみに目を奪われると、本来の「住居は居住者の生命を守るもの」といった大元の発想すら見過ごしてしまいがちです。

 1995年の阪神・淡路大震災では、震災負傷者の実に7割の方が、転倒した家具ないし破損したガラスによりケガをした人たちでした。マンション購入をご検討される際、住まいにおける防災投資を新耐震・旧耐震といった建築物の構造に置くのか室内の家具固定や非常用品の備蓄といった面に置くのか、リスクのとらまえ方は人それぞれですが、近視眼的にマンション売却時の金銭的価値だけに関心が向き万一の備えを疎かにするようなことだけは避けるようお考えいただければと思います。

※4 2016年10月9日放送、NHKスペシャル「あなたの家が危ない~熊本地震からの警告~」

取材・文/TN(HN)
≪ 前へ|「外国人向けマンション」とは?~品川再開発と国家戦略住宅整備事業②   記事一覧   2018年8~10月人気記事ランキング(タマホーム不動産)|次へ ≫

トップへ戻る