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フリーターは、なぜ家を買えたのか?/中

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テーマ:ライター記事



前回、作家・有川浩さんの小説『フリーター、家を買う。』を下敷きに、その主人公が作中において、実際の不動産探しのうえでも理に適った行動をしていることに着目してみました。今回はその第2回目です。)


□Step2.情報の整理

 さて、結果的に家を買う決断を行ったとは、弱冠25歳の若者である主人公・武誠治(たけ せいじ)が、不動産物件が一つ一つもつ強烈な個性を前に、集めた情報をどう整理・判断してよいか、当初は相当に悩んだことと思われます。

 物件探しで悩まれた経験のある方なら、それが賃貸であれ持ち家であれ、"至高の一品"を求めるあまりに、物件情報収集の条件がどんどん緩くなり、本来の希望条件から離れたところで「情報の海に溺れる」といった経験をされたことが一度はあるはずです。

 
「それにパソコンでデータ作ったら、
 見た目キレイになるだけじゃなくて
 色々いいことがあるんですよ。
 明日お見せします」
(引用:有川浩『フリーター、家を買う。』、
幻冬舎[幻冬舎文庫]、2012年、P224)


 誠治がパソコンでのデータ整理が得意であるのは、過去何年分と積み上げられた大悦土木の紙資料の帳票類を、たった1日の試行錯誤で難なくデータ化してみせた、彼の力量からも見てとれます。

 幸いなことに不動産広告には、いわゆる「不動産の表示に関する公正競争規約」というルールがあり、広告物に記載しなければならない項目がある程度定型化されています。また、最近ではSUUMOやHOME'Sといった不動産情報サイトで、物件の希望条件を簡単に入力できる画面があるので、これらを参考に誠治が一般的な物件選びの基準をデータ入力に当たっての土台にした可能性は大いに考えられます。


□Step3.情報の比較

 情報を整理する過程で、たいていの場合は、自分の希望条件が大方見えてきます。

 多くの人にとって、不動産という買い物は普段の想像を超えた金額がやり取りされ、また、不動産購入で得た経験を次回に活かすという再現性が低い行為ですので、ついつい、損をしたくないという感情が強く前に出過ぎてしまいがちで、「至高の一品」を探すため情報収集の手段と目的が逆転するという罠に陥ることがままあります。

 それが、情報を整理する過程において「捨てる」という行為を経ることにより、自分が何を重要視し、また優先させて不動産選びを進めているのか、余分なものが削り取られて見えてきます。


「よし、取り敢えず過去三年分遡って
 そういうデータを作れ。
 それだけ遡れば無駄や工事の傾向が
 見えてくるだろう。
 残りは暇見て追々として、新規で
 追加されていく書類を優先して入れろ。
 当分その作業に没頭してていい」
(引用:有川浩『フリーター、家を買う。』、
幻冬舎[幻冬舎文庫]、2012年、P239)


 誠治の雇い主にして上司の、大悦土木の作業長こと大悦貞夫は、誠治の初めての業務部での仕事ぶりに対し、このような指示を出しました。

 まさに、この台詞は、情報整理によって得られる価値の本質を突いています。

 心理テストやSPIで人のすべての適性が測れないように、人は時として自分自身にさえ嘘を吐くことがあります。昨今、不動産仲介業のようなマッチングビジネスは早晩AIに取って代わられるだろうという話をよく耳にします。しかしながら、不動産購入を検討される多くの方を悩ませるのは、理想と現実のギャップ以上に、自分が求める理想の住まいの希望条件がうまく整理できていないことに起因する、優先順位の混乱が多いのです。

 Amazonや楽天等のECビジネスにおいて、最後に商品を顧客の自宅まで届けるための"人力による物流"のことを「ラストワンマイル」といいます。不動産仲介業でいえば、すべての仕事が無人化・自動化・AI化した先に残るラストワンマイルが、こうした、お客様の希望条件の整理を如何にお手伝いさし上げるかという能力にかかっていると思います。

≪次回へ続きます≫

取材・文/TN(HN)
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